樹海に住む人々

 地上には人跡未踏と思われてきた広大な樹海がある。最近、ある探検家の一行がその奥地で巨大な竜の抜け殻を発見した。そこには小規模の街の痕跡があったが、既に人影はなかった。抜け殻からこぼれ落ちる光だけが、主の消えた街を虹色に染め上げていた。
 探検家一行の報告を受け、一部の学者が調査団を編成して街を探したが、幾ら探しても竜の抜け殻は見つからなかったという。探検家が街から持ち帰った神話の織られたタペストリーと竜の抜け殻の欠片だけが街が実存したことの数少ない証となった。


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