竜の気配

 食糧供給が安定した後も浮島の調査は続いた。飛翔鉱に続く大きな発見があったのは鯨が旅を始めてから丁度五十年目のことだった。それまで同じ航路を辿っていた鯨が嵐を避けるために別の航路をとり、初めて訪れた浮島で竜の骨が発掘されたのだ。
 竜の生態は地上で稀に抜け殻が確認される以外ほぼ知られていない。そのためこの発見は地上の人々にも瞬く間に広まった。竜の生態を研究している学者の多くは鯨へ搭乗することを強く希望したが、食料事情などにより厳正な審査の上抽選となった。
 このとき作成された抽選チケットのデザインは、後に一時的に鯨野へ滞在するための乗鯨券として受け継がれることとなる。


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