失われた飛翔鉱

 浮島から採掘された鉱物の中で、とりわけ地上で反響があったのは飛翔鉱だった。それ自体浮力を持つ不思議な鉱物だが、厳重に保管していても一年も経てば空中に霧散してしまう。飛翔鉱は一定の熱を発しており、空にあるときは適度に冷やされ結晶化するが、地上の温度では固体を保つことができず、気化してしまう。空の浮島が特異な生態系を形作っているのは、飛翔鉱の熱が作用していると考えられている。
 かつて空の浮島から飛翔鉱の採掘が大々的にされたとき、一部の島の高度が下がったことから採掘量が制限されることになった。だが、その特性のため、採掘されたと言われている鉱物の塊は今や跡形もない。霧散した飛翔鉱は風に乗り、再び浮島で結晶したと言われている。


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